おわりに
今回、「食育を通した家庭教育の充実」、「住民参画による活動拠点づくり」の2つのテーマに即して、家庭・地域の教育力を高めるための方策について提言を行いました。
これらの方策を推進するためには、各家庭が現代の子どもが抱えている問題や家庭教育の重要性を認識し、日頃から家族団らんの中での食育を実践することが大切です。また、地域における家庭教育の支援体制づくりには、「住民参画による活動拠点づくり」で提案したような「地域共育ネットワーク」の普及が重要と考えます。このネットワークには、地域、家庭、学校、行政など、青少年の健全育成に関わる全ての関係者が参画し、協働して取り組むことが期待されます。
また、これらの施策の推進に当たっては、平成20年6月に改正された社会教育法に、国及び地方公共団体の任務として「関係者相互間の連携及び協力の促進に努めること」が加えられたこと、さらに、社会教育主事は「学校が社会教育関係団体等の関係者の協力を得て教育活動を行う場合には、その求めに応じて助言を行うことができる。」という規定が設けられたことを踏まえて、県・市町村教育委員会の社会教育・生涯学習担当部局が中心となって進められるよう期待しています。
注釈
- 基礎・基本を確実に身に付け、いかに社会が変化しようと、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力。
- 自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心などの豊かな人間性。
- たくましく生きるための健康や体力など。
今、改めて、食育を、「生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきもの」と位置付けるとともに、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を推進することが求められている。」
北海道教育大学教育学部教授 小澤治夫氏「食生活習慣と学業成績・体力・健康との関連」
子どもの気力・体力・学力向上には生活習慣の立て直し (平成18年8月)
東京都立教育研究所 「子どもたちの揺れ動く心と学校のあり方」研究報告書 (平成11年3月)
食育基本法でいう「食育」と同義であるが、ここでは特に家庭教育での取組を強調している。
近年、食生活が豊かになる一方で、栄養の偏り、不規則な食事、生活習慣病の増加などの問題が生じており、「食」について見直し、健全な食生活を取り戻すことが必要になっている。こうした中で、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる「食育」の重要性を改めて認識し、食の宝庫である本県の特性を生かした食育を推進する目的で平成18年に策定した。
参考データ
資料1 家庭の教育力の低下
~約7割の親が家庭の教育力が低下していると実感~ 近年、育児に不安を抱えている親の増大や、児童を虐待する親の急増、また青少年をめぐる様々な憂慮される問題行動(暴力・非行行為、いじめ等)が取りざたされるたびに指摘されることであるが、家庭の教育力が低下していると言われる。 |
国立教育政策研究所内家庭教育研究会「家庭の教育力再生に関する調査研究」平成13年
資料2 朝食を食べていますか
全国的にも本県においても、約8割は毎日朝食を食べているが、約1割は、あまり食べていなかったり、全く食べていなかったりしている。
文部科学省「全国学力・学習調査」(平成20年度)
資料3 子どもの希望
株式会社日本総合研究所「地域の教育力に関する実態調査」(文部科学省委託調査平成18年3月)によると、「子どもが健やかに育まれるために地域で力を入れるべきこと」について保護者にたずねたところ、一番多い回答は「地域内での子どもの安全を確保するための活動をする」である。次いで、「異なる考えをもった人たちや年齢の人たちとの交流」「地域の歴史や文化にふれたり、自然を体験したり学ぶ機会を増やす」「文化やスポーツなど、子どもの個性を伸ばす教育を強化する」「子どもに礼儀やしつけをしっかり教える」であり、地域における子どもの安全確保や地域の教育力に対する期待の大きさが示されている。
放課後はどのように過ごしたいか
※「何も(何の活動も)やっていない」の合計 抜粋
友だちと外で遊びたい | 54.1% |
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自分の家や友だちの家で遊びたい | 45.1% |
学校のクラブ活動をしたい | 27.5% |
塾やならいごとに行きたい | 7.4% |
ひとりでテレビを見たりゲームをしたい | 26.1% |
家族と家で過ごしたい | 23.1% |
家で寝ていたい | 27.2% |
塾などの宿題をしたい | 1.7% |
資料4 子どもの現状
「地域の教育力に関する実態調査」(文部科学省平成18.2)によると、放課後においても土・日においても、家でテレビを見たり、テレビゲーム・携帯ゲームをしたりなどして過ごす子どもが多い。一方で、外での遊びや地域の活動に参加する子どもは少ない。特に、放課後においてその傾向が強い。
資料5 子どもの希望
「子どもの学校外での学習活動に関する実態調査報告」文部科学省(平成20年8月)によると、「放 課後の過ごし方」「休日の過ごし方」について、一番多い子どもの希望は、「友だちと外で遊びたい」、次いで「自分の家や友だちの家で遊びたい」であり、友だちと一緒に外で遊ぶことを求める子どもが多い。
放課後はどのように過ごしたいか
※「何も(何の活動も)やっていない」の合計 抜粋
地域内での子どもの安全を確保するための活動をする | 66.9% |
---|---|
異なる考えをもった人たちや年齢の人たちとの交流 | 36.3% |
地域の歴史や文化、自然を体験したり学ぶ機会を増やす | 33.5% |
文化やスポーツなど、子どもの個性を伸ばす教育を強化する | 31.9% |
参考事例
食育を通した家庭教育の充実を図る(家庭の教育力を高めるために)関係
- 延岡市立緑ヶ丘小学校「早起き工場見学と朝食会」
地元企業や商工会議所等と連携し、「早寝早起き朝ごはん」の推進、栄養的にバランスの良い朝食について理解を深めることを目的に開催した。(平成20年8月23日)- 門川町「早起き、早寝、朝ごはん」啓発資料(門川町町報「門川町元気な子どもを育む食育委員会作成」)
町報による啓発とともに、スローガンが書かれたマグネット式の掲示資料を作成している。
- 岡山県「親子料理教室で地域に食育の普及を」(中国四国地域食育推進協議会「中国四国地域における食育推進の先進的な取組事例」)
悩みを抱える家庭への訪問、親子交流会、地域のお母さんの味クッキングを通して、地域の人たちとともに子育ての輪を広げていく啓発運動- 香川県綾南町立滝宮小学校「お弁当の日」(「食育コンクールデータベース」ホームページより)
年に数回、小学校5年生以上の子どものいる家庭を対象として設定し、弁当は子どもが作り、親は手伝わないというものである。そのために、学校における家庭科での事前指導 はもちろん、家庭においては日頃から親子で台所に立つことが必要である。- 北海道士別市「父親の家庭教育への参加を促進するために~家庭教育サポート企業・食 育関係団体・公民館が連携した事業~」(北海道士別市ホームページより)
父子のコミュニケーションを図る場を設けることによって、父親の家庭教育への参加を促進し、食育の観点から、バランスの整った食事を摂ることの大切さを伝え、料理教室で父子で調理する。- 山形県「夢未来やまがた食育県民運動推進フォーラム」(山形県ホームページより)
県民一人一人が食育の重要性を理解し、実践する機運を高めることが重要であることから、食育推進に関係する機関・団体・ボランティアが一体となって、地域から食育県民運動を強力に推進するために開催している。
- 文部科学省事業「地域における家庭教育支援基盤形成事業-すべての親へのきめ細かな 支援手法の開発-」
身近な地域において子育てサポーターリーダー等で構成する「家庭教育支援チーム」を設置し、情報や学習機会の提供、相談体制の充実をはじめとするきめ細かな家庭教育支援を行うことにより、地域全体で家庭教育を支えていく基盤の形成をめざしている。- 「食に関する指導の進め方」(文部科学省「食に関する指導の手引き」より)
例:エコロジーで(環境に優しくて)エコノミー(経済的)な料理や調理法について考え、調理によって出されるごみをなるべく少なくし、エネルギーを効率よく使って調理し、残さず食べるなど、自分たちの食事を見つめ、日常生活の在り方を見直す。- 島根県雲南市「楽しくつくろう!親子でつくる朝ごはん教室」(文部科学省「早寝早起 き朝ごはん~子どもの生活リズムハンドブックより」)
小学校5年生の子どもとその保護者を対象に、「親子で作る」食事についてのディスカ ッションを行い、実際に各家庭で朝食を作り、写真入りでコメントを記載したものを提出し、栄養士がコメントを書いて返却する取組
地域住民の参画による活動拠点をつくる(地域の教育力を高めるために)関係
門川町では、平成17年度から、町内関係団体から500を超える地域住民の連携協力による子どもの安全・安心見守り活動を推進している。また、夜間には、青少年健全育成団体の安全・安心の見守り活動を実施している。
- 子ども見守りネットワーク(文部科学省「子ども見守りナビ」※全国の取組状況が紹介されている。)
- 門川町「子ども見守りネットワークづくり」(組織体制づくり:年間2回の総会と地域部会)
<休日の活動、宿泊を伴う活動事例>
- ふれあい活動
子どもたちの身近にある廃校跡、公民館、地域のグラウンド等を拠点に、七夕づくり、昔の遊び、ものづくり活動、グラウンドゴルフ等の活動を行う。- 登館日
県内において、児童が夏休みの登校日に自治公民館に通う「登館日」を実施している。綾小学校では、自治公民館と連携して、竹細工やグラウンドゴルフ、農業施設見学等を実施している。- 通学合宿
県内において、公民館で共同生活をしながら学校に通う通学合宿を実施している。綾小学校では、郷土料理教室や講話などが計画されており、大学生もサポートしている。
<放課後における活動事例>- 「放課後子ども教室」
平成20年度県内13市町村64教室が開設している。
- 千葉県習志野市「秋津小学校コミュニティールーム」(「秋津小学校コミュニティールーム」ホームページより)
秋津小学校区に居住・勤務している全員を対象に、一人一人の趣味やスポーツ・文化的な楽しみを、継続的に行えるように応援するための施設で、施設を利用する成人サークルと子どもたちとの交流を促進するなど、開かれた運営がなされている。- 福岡県須恵町「校区コミュニティー」(「須恵町ボランティア派遣事業」ホームページより)
小学校に地域住民や子どもの生涯学習支援・社会教育機能をもたせるために、小学校の 余裕教室に事務局を設置し、地域住民の有志と学校との協働により運営している。- NPO法人「子どもの森」(「子どもの森」ホームページより)
旧西門川小学校松瀬分校廃校舎跡を活用して、環境教育関係の読書活動や里山学習などを行い、子どもたちに貴重な自主的体験活動をさせ成果をあげている。また、「森と農山村のかかわり」などの講演会も行っている。
- 地域で子どもを育てる「地域教育システム創造」実践モデル事業
平成18年度からの3年間の宮崎県教育委員会の事業。学校支援ボランティアを活用した学校教育の充実や自治公民館を活用して放課後に読み聞かせ、体験活動等を行う「寺子屋」の開催等、地域において地区住民の参画による活動が実施された。- 和歌山県「地域共育コーディネーター制度」(和歌山県教育委員会ホームページより)
拠点となる地域共育コミュニティ本部に地域共育コーディネーターを配置し、学校と地域住民を結びつけるとともに、活動を一緒に創り上げるための調整を行う- 文部科学省「学校支援地域本部事業」
中学校区を単位として、地域全体で学校教育を支援する連携体制を構築するため、市町村には「学校支援地域本部」、学校区内には「地域教育協議会」を設置し、教員の負担軽減及び地域の教育力向上を図る。
本県:17市町(21本部)平成21年1月現在- 東京都小平市「学校支援ボランティア体制」
学校を拠点に学校支援ボランティア養成講座等を学校やコーディネーターと協力して企画し、学ぶ姿を伝えたり、子どもとともに学び、知識、知恵、技術、経験を授業やクラブ活動などの教育活動のために提供する。- 子育て支援ボランティアネットワーク(宮崎県ホームページ※「子育て応援・子育て支援関連リンク」に掲載)
子育て情報や子育て支援関連の宮崎県内の個人・団体等によるホームページ等を紹介している。
宮崎県社会教育委員会議審議経過
回 | 期日 | 審議内容 |
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1 | 平成19年7月27日(金) |
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2 | 平成19年9月4日(金) |
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3 | 平成19年11月20日(火 |
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4 | 平成20年1月18日(金) |
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5 | 平成20年5月22日(木) |
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6 | 平成20年8月19日(火) |
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7 | 平成20年11月10日(月) |
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8 | 平成21年2月9日(月) |
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