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食育を通した家庭教育の充実を図る(家庭の教育力を高めるために)

1 食育を通した家庭教育充実の意義

(1) 家庭における子育ての現状から

人は家庭の中に生まれ、家庭の中で健全に成長していく。家庭の在り方は、子どもの成長にとって最も重要なことである。

今、教育の出発点である家庭教育が大きく問われている。家族同士の団らんや命の大切さの実感、生活習慣の育成等の機能を本来担うべき家庭に変化がみられることから、家庭教育の在り方を見直す必要がある。(資料1)

例えば、家庭によっては、子育てに無関心であったり、子どもに基本的な生活習慣等のしつけを十分行っていないところもある。そのため、子どもが学校生活や地域での生活において問題のある行動を起こしたり、集団生活ができないといった状況が出てきている。

そこで、子どもたちの健全育成には、家庭の役割を十分認識しながら、家庭の教育力の向上を図ることが重要である。

(2) 家庭における食育の現状から

家庭の大きな役割の一つに、家族団らんの食事を通した人間づくりがある。家族は、同じ食卓を囲み、お互いの顔を見ながら会話をする中で、喜びを共有したり、物の見方、考え方、対処の仕方、生活態度等、人間として生きていく上で必要な基本的な能力を身に付けてきた。

しかしながら、今日では、核家族化や生活スタイルの変化により、このような家庭の役割についての認識が薄れ、「孤食」の子どもが増えるなど、家族で食事をしながら会話をする場面が少なくなってきている。

また、このような状況と食生活の変化が相まって朝食を食べない子どもも出てきている朝食を食べないことにより、健康や生活に様々な弊害が出ていることが明らかになってきている。(資料2)例えば、「朝食抜きの子どもは体温が低く、朝の通学意欲もわかず、学校に行っても集中力がなく、授業中眠ってしまうなど、活力が上がらないままに一日を送る。その結果、体力面や学習成績に影響してくる。」などの調査結果注3がある。また、別の報告書注4では、「このような児童生徒は『キレやすい』」といわれている。

そこで、子育て世代やこれから親になる若者世代を視野に入れつつ、それぞれの家庭が家族団らんで食事をする姿を取り戻すことにより、家族の会話が増え、子どもの健康面、精神面でもよい効果が出てくることを考慮し、「食育」注5を通した家庭教育支援の具体的な方策を考え、提言することとした。

2 提言

(1) 食育を通した家庭教育充実のための具体的な方策

ア 「家族みんなで、朝ごはん」等のスローガンのもと、食育県民運動を推進する

本県においては、平成18年に「宮崎県食育推進計画」注6が策定され、これに基づいて、「健全な食生活の実践」を目的として「食育」の取組が展開されている。県民が食育の重要性の認識を共有し、そのことを啓発していく「『いただきます』からはじめよう宣言」も行われている。

そこで今回、家庭教育の視点から、家庭の現状やその在り方を見直す機会とするため、食育に目を向け、食育県民運動を推進していくことを提言する。
例えば、「家族みんなで、朝ごはん」等のスローガンの下、学校・家庭・地域をあげて、子どもの健やかな成長を期して、食育県民運動を展開していくことが必要である。

具体的には、PTAや公民館と連携して「家族みんなで、朝ごはん」等の運動を実践するモデル自治公民館を設定し、その実践事例を発表する。その発表を通して、県下に啓発を図ることができる。また、食に関する企業や経済関連団体等と相互に連携して「食の日」を新たに設定したり、「家族みんなで、朝ごはん」等の関連行事を実施するなど、子育て支援を含めた総合的な地域活性化策として実施することが考えられる。

このように、県民全体で食育を通した家庭教育の推進に係る企画をすることで、「孤食」等をなくし家族の和を深めることができる。

イ 子育てに問題や悩みを抱える家庭に対して、食を通して地域で支援する体制づくりに取り組む

子育てに問題や悩みを抱える家庭は、学校行事や地域の行事に参加しない傾向にあり、解決の糸口を探しあぐねている保護者が少なくないと思われる。

そこで、これらの家庭に対する食を通した地域で支援する体制づくりのために、次のような取組が求められる。

(ア) 食に関するボランティア等による家庭への支援体制を強める
食に対する啓発を行うためには、地域の栄養士や保健師、食に関する専門的な知識をもつコーディネーター、さらには食に関するボランティア(地域の料理研究家や料理を趣味にしておりボランティアとして活動できる人)等の人材を確保し、それを人材バンク化することが有効である。そして、地域住民が集まる行事等にそれらの人材を派遣し、その特性を生かした取組をすることで、家庭への支援体制を強めることができる。
(イ) 家族料理教室(「わいわいがやがや料理教室」)を開催する
地域で地産地消による家族料理教室を開催し、小学生や中学生を対象として、家族がともに料理づくりに挑戦する機会を提供する。同時に、食の大切さや家族みんなで食事することの大切さを話し合い、地域をあげて食育を推進する。また、それぞれの地区に伝わる郷土料理を伝承していく機会とすることで、更に有意義な取組に発展させる。

ウ 家庭で親子がともに台所に立つ体験をすることで、親子の絆を深める

自立し始めた子どもたちが、最初に作るおかずは、家庭で常日頃食べている馴染みのものであることが多い。家庭料理はこのようにして、伝えられていくのである。
親子がともに台所に立つことにより、食事の準備を通してお互いの間にコミュニケーションの時間を共有し、絆を深めていくことが必要である。

そのために、例えば「弁当の日」を設定して、子ども自身が弁当づくりを体験することも意義のあることである。このことが親子のふれあいの機会を増やすものとなり、地域として取り組めば、家庭教育の大きな啓発活動ともなる。

エ 青少年に対し、食事を大切にする心を培い、健全な食習慣を身に付けさせる

(ア) 「農業体験」の推進により、食事を大切にする心を培う
子どもたちは、自分で育てた植物には愛情をもち接する。このことから、子ども自身に植え付けから収穫までを体験させることで、命や自然に感動する心、そして、食の大切さを学ぶことができる。
(イ) 「今日の栄養チェック表」をもとに家族で話し合いをする
青年期には、安易なダイエットや栄養補助食品の利用等、食事を軽視しがちな傾向がみられ、その食生活は、栄養のバランスに欠けたものであることが多い。
そこで、必要エネルギーや栄養素を簡単にチェックできる表をもとに、一日の活動に必要なエネルギーを確保したかどうかを把握し、家庭で話し合う。これが習慣化される中で、おのずと食事に関心が向き、日常生活を見直すことができるようになる。

オ 食育に関する情報を積極的に発信する

食に関する情報をもつ関係機関が連携し、保護者に対して、情報を積極的に発信する こと(シールやチラシ等の作成)や、乳幼児を抱える若い親への啓発(講演会等の開催、就学前健診の活用等)に努める。

また、キャンプにおける飯ごう炊さんの体験を含め、県や地域等でも親子の食に関する様々な体験活動を行っているが、十分に周知されていない現状がある。各行政部局や施設等が単独でPRをするだけではなく、連携して各機関・団体が行っているすべての活動が一目で分かる「食に関する家族体験活動メニュー」をパンフレットやホームページで紹介することが望ましい。

(2) 食育を通した家庭教育の充実を支援するために

食の問題については奥が深く、家庭には、それぞれ独自の事情があり、食育の認識についても家庭によりそれぞれ違いがあるが、食に関する教育は家庭が基本であり、親がその大切さの認識を深める必要がある。食育を通した家庭教育の充実を図るためには、下記に示すような、学校、家庭、地域が一体となった取組が必要である。

ア 食育県民運動を推進すること

学校、社会教育関係団体、子育て支援のNPO、企業、地域、市町村等をあげて、「家族みんなで朝ごはん」等をスローガンに掲げ、食育県民運動として展開することを期待する。特にマスメディアの協力を得ながら取り組むことが効果が大きいと考える。

イ 地域で家庭教育を支援すること

身近な地域において、食育に関する情報や学習機会の提供、相談体制の充実をはじめとするきめ細かな支援を行うことにより、食育を通して地域全体で家庭教育を支援していく環境づくりを期待する。

ウ 学校、家庭、地域がそれぞれの役割を発揮すること

学校から発信する情報内容や家庭・地域でできることなどを整理し、相互に連携を図りながら、それぞれの役割を果たすことを期待する。

(ア) 学校から家庭へ
  • 給食献立表、給食便りや保健便りの配布
  • 給食試食会、家族給食会、栄養個別指導、食に関する講演会、料理講習会等の開催
(イ) 学校から地域へ
  • ふれあい給食会、招待給食会、食に関する講演会等の開催
(ウ) 家庭・地域から学校へ
  • 食に関する指導への積極的な参加
  • 学校保健委員会、給食委員会、家庭教育学級への参加
  • 健康に関する行事や家族料理教室の開催等
(エ) 地域から家庭へ
  • 公民館の館報に、子どもの成長を促すための献立を掲載
  • 食事を通して心身ともに健全な子どもを育てるための啓発
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