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第3章 成年期における「学びの場」の充実について

1  地域社会を支える人財づくりにつながる県民の学びについて

  少子高齢化・人口減少時代を迎えている中、本県においては全国平均より約5年早く高齢化が進んでいる状況にある。このような状況の中、将来にわたって社会や経済の活力を維持し、安心して暮らせる未来を築くためには、県民一人一人が地域社会を支える存在であることを自覚するとともに、郷土や社会を担う意識を強く持ち、その発展に貢献できる人財づくりが必要である。

  地域社会を支える人財とは、具体的には、人と人をつなぐことのできる人であり、孤立している人に手を差し伸べ、声をかけることができる人である。さらに、調整力があり、柔軟性のある発想をもった人、情報を発信できる人である。

  このような人財を育てるためには、趣味や娯楽など自分の知識、技術、経験を高めて個人の生活の充実を図る学びから、身近な地域の課題を解決するために、自分の知識、技術、経験を地域社会に役立てていける学びへと発展させていく必要がある。すなわち、個人的生活の充実から社会的生活の充実につなげていくことが大切である。

※人財:人材は県づくりの原動力であり、未来を築いていくための貴重な財産であるとの考え方から、本答申においては、「人材」を「人財」と表記している。

2  高等教育機関(大学等)との連携

  近年、高等教育機関(大学等)に対して、研究・教育機能を開放して地域や社会の発展に貢献すべきであるという大学開放を求める声が高まっており、生涯学習機能、地域貢献機能をより一層高めることが求められている。また、多種多様な研究人財と施設・設備を有しており、地域の知の拠点として、学内資源を活用して地域課題の解決に向けた積極的な取組をしていくことが期待されている。

  県内の大学の中には、市民対象講座を実施したり、大学教員が地域貢献として出向いて出前講座をしたりしている事例が見られる。また、個人の興味関心の充足、まちづくり・地域づくりリーダーの育成、より専門性を目指した職業人の育成に向けた「学び」を行っている大学もある。

  一方、企業には、企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)として社会へ向けた活動が求められている。本県では、アシスト企業として、学校教育や地域住民等の学習活動に対して、企業内の施設・設備の開放や専門的な知識を有する指導者の派遣、企業の特色を生かした学習機会の提供など、地域貢献活動が行われている。

  また、企業には、従業員の生涯学習への参加に対して、一定の補助や奨励をするなど支援していくことが望まれる。従業員の仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を推進し、仕事の充実とともに家庭生活の充実や生涯学習、ボランティア活動への取組など個人の生活の充実にも関心を向ける必要がある。

  しかしながら、地域を支える人財や職業人の育成を行うには、高等教育機関(大学等)だけで実施するには限界がある。専門性をもつ企業と連携して、県全体、そして全国の方々とも連携して取り組んでいく必要がある。まずは、県内の行政、民間、NPO、大学、企業等が連携(ネットワーク化)して、宮崎県民が県内で高度な学びを得ることができる、そういう「学びの場」を構築し継続していくことが求められている。

  さらに、社会人の学び直し、職業人の育成は、働いている現役世代が主な対象となることから、学びの場の利便性などの環境整備を図ることが極めて重要である。身近に学ぶ場のない県民にとっては、県内自治体が導入しているテレビ会議システムを活用したサテライト方式の学びが必要とされる。このような場の確保にも、多様な機関が連携することの意義がある。

※サテライト方式:本拠地となる場所や施設から離れた場所に設けられた施設で、本拠地に準じる機能を提供する方式。

3  学習情報の提供及び学習相談体制の整備

  地域社会を支える人財づくりにつながる学びとは、学習の成果を生かして、地域課題の解決を目指していく学習活動であることから、地域住民により身近な市町村の生涯学習振興行政が主体となりやすい。県には、市町村の支援や市町村を超えた広域の学習情報の提供が求められる。

  その際、はじめは、自分の興味・関心から入った講座からスタートした人が、他にも様々な学びがあることに気づき、職業スキルの向上にむけた学びや、まちづくり・地域づくりのための学びなど他の学びへと移行していけると望ましい。そのためには、学びを整理して、わかりやすく県民に示したり、相談に応じたりする必要がある。

  また、学びの情報の提供だけではなく、「学びを生かす場」、「実践する場」の紹介も大切である。県の役割としては、県民に新たな学びを提供するためのコーディネートが求められ、県民の学びを支えるとともに、学びの成果の活用を支援することが必要である。

4  県民への展開方策について

  宮崎県民が県内で高度な学びを得ることができるよう、行政、民間、NPO、大学、企業等が連携し、県教育研修センターや青少年自然の家等を活用して、地域社会を支える人財づくりにつながる学びを提供していくことが必要である。

  特に、生涯学習・社会教育支援機能を新たに有した県教育研修センターには、県民を対象とした学びの提供や学びの情報の提供、学びの成果を活用する場の紹介を行うなど、県民の学びを幅広く支援(コーディネート)していくことが期待される。

  また、県教育研修センターには、生涯学習・社会教育関係者が一堂に会し、様々な実践を持ち寄り、学び合う場を設定することも期待される。行政、民間、NPO、大学、企業等との連携・協働(ネットワーク化)、優良実践の県内全域への普及など、本県の学びを継続・発展する仕組みを構築することが望まれる。

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