第3章 職業能力の向上につながる学習支援
1 現状と課題
近年の企業間競争の激化、雇用形態の変化等により正社員の数が減少しており、職業に関して体系的な基礎教育、専門的訓練を受けることができない人が増えている。また労働者の就労形態、職業意識の多様化により若年層が早期に離職する傾向が見られる。
さらに団塊の世代が大量退職する時期を迎え、製造業をはじめとするものづくりの現場では後継者不足や技能継承問題が深刻化する恐れもある。
今後、職業観や雇用形態の変化、退職年齢の引き上げ等に伴い、若者や高齢者等の職業能力を高めることが求められる。
そこで、県民が自分の生き方を主体的に選択し、生涯にわたり学び、知識・技能を習得し、その成果を生かして様々な分野で能力を発揮できるような学習環境の整備が必要である。
また、本県においても若年層の転職率や離職率が他の年齢層に比べて高く、就業状況にも変化が生じており、さらに団塊世代の退職者の再就労意欲も高いものがある。
そこで、早期からの勤労観・職業観の育成、あるいは新たな職業能力の獲得を希望する人に対する学習機会や必要な情報の提供、関係団体・機関等の連携が課題となる。
2 求められる方策
(1) 早期からの勤労観・職業観の育成
望ましい勤労観・職業観の形成には、発達段階における様々な経験や人とのふれ合いなど様々な要素が関わってくるため、家庭、学校、地域の連携・協力が重要である。
そこで家庭では、乳幼児期から手伝いなどで役割を果たす体験をさせたり、親子で将来や仕事について話し合うことで職業観の基礎を培うこと、地域のボランティア活動に親子で参加することを通して勤労観を育成することなどが重要である。さらに、保護者には、学校で行われるキャリア教育の取組を理解し、学校と一体になって子どもたちの成長・発達を支えていくことが求められる。
また、小学校では、児童一人一人の発達段階に応じて社会、自然、文化等に関する体験活動や清掃活動、係活動等を通して自らの役割を果たそうとする意欲や態度を育み、社会的・職業的に自立するための基盤づくりを行うことが求められる。
中学校・高校では、自分の生き方を考えさせる進路指導あるいは今後の社会情勢、希望する職業に就くために必要な資格等を含め職業に関する情報提供、社会人から様々な職業体験談を聞く機会の確保、働く意味を理解させるための職場体験、仕事に対する興味を喚起すること等、「働くこと」への関心や学習意欲を高めることが必要である。
さらに、一人一人の発達段階を考慮し、社会生活を円滑に送るためのコミュニケーション能力の育成をねらいとしたソーシャルスキル体験を重視することも必要である。
児童生徒一人一人の勤労観・職業観を育てる教育
対人関係におけるあいさつ、依頼、交渉、自己主張等の技能
(2) 各年代層や地域性を考慮した職業能力の向上支援
急激に変化し、グローバル化する現代社会に対応するためには、職業能力の向上につながる学習支援が必要である。
そのため、行政は学び直しによる転職やキャリアアップの支援体制を整えることが重要である。また、自分の生き方を模索している人や、農業、林業、水産業への従事をめざす人たちの学習を支援する相談窓口等の充実や、関係機関との連携が求められる。
さらに、社会教育施設等においても、フリーターを含む若者、働き盛りの世代や高齢者等の職業能力の向上につながる講座・教室等の情報提供を充実させることが必要である。そのためには、「いつでも、どこでも、誰でも」必要なときに職業能力向上に関する情報を入手できる情報提供システムの整備が重要である。
国際化、特に経済活動やものの考え方などを世界的規模に広げること
より高い資格・能力を身につけること。経歴を高めること
(3) 関係団体・機関等におけるネットワークづくり
職業能力の向上につながる学習を支援するためには、行政が大学等の高等教育機関、NPO法人や民間教育機関等と連携し、その機能充実を図ることが必要である。
また、学校と地域の企業や商工会議所等とが連携して、学校への講師派遣や職場見学を行う等、職業に対する子どもの興味・関心を高める取組が重要である。
大学では、社会人受入れの拡大や、履修形態の工夫、社会人のニーズに対応する教育内容・方法の充実等に取り組む等、地域に対する貢献をより一層推進していくことが求められる。