4.現状と課題
9.HIV感染者、ハンセン病患者・元患者等に関する問題
(1).現状と課題
HIV感染者やエイズ患者に対しては、正しい知識や理解の不足か ら、これまで多くの偏見や差別意識を生んできました。そのことが原因となって、医療現場における診療拒否や無断検診のほか、採用拒否や職場解雇、入学(入 園)や登校(登園)の拒否、アパートへの入居拒否・立ち退き要求、公衆浴場への入場拒否など、社会生活の様々な場面で人権侵害となって現れています。その ため、感染者や患者の多くが不安や苦しみを明らかにできない現状があります。
そこで、基本的人権尊重の観点から、すべての人の生命の尊さを広く伝えるとともに、HIV感染者やエイズ患者との共存・共生に関する理解を深めることが求められます。
宮崎県においては、平成11年に「宮崎県感染症予防計画」を策定し、エイズ予防キャンペーンや専用電話「エイズホットライン」による相談事業等により、差別や偏見をなくすための正しい知識の普及・啓発に取り組んでいます。
今後は、最新の情報に基づく正しい知識や予防の普及を通じて、HIV感染者やエイズ患者に対する偏見の払拭を図るとともに、感染者・患者等の思いや願いに学び、共に生きる態度や行動力を育むための教育の推進が求められています。
平 成13年5月11日にハンセン病患者・元患者等に対する国の損害賠償責任を認める熊本地裁判決が下されました。これが大きな契機となって、ハンセン病問題 の重大性が改めて国民に明らかにされ、国によるハンセン病患者・元患者等に対する補償や、名誉回復及び福祉増進等の措置が図られました。しかし、療養所入 所者の多くは、強制隔離の期間が長期に及んだことや高齢化、社会の差別や偏見が存在することなどにより、社会復帰が困難な状況にあります。
宮崎県においては、講演会の開催や県民を対象とした療養所訪問事業などにより、ハンセン病患者・元患者等に対する正しい理解を図るとともに、本県出身者の社会復帰に向けて関係機関との支援体制づくりに努めています。
今後は、ハンセン病患者・元患者等について正しく理解し、患者等に対する偏見の払拭を図るとともに、患者等の思いや願いに学び、共に生きる態度や行動力を育むための教育の推進が求められます。
(2).指導の在り方及び配慮事項
社会教育においては、HIV感染者やエイズ患者、ハンセン病に対する偏見や差別意識を払拭するために、正しい知識を身に付ける学習やハンセン病患者・元患者等に対する正しい理解が深まるような学習が大切です。そのためには、正しい理解を図るための教材開発や社会教育指導者の研修を充実することが大切です。
指導においては、以下の点に配慮することが必要です。
- HIV感染等について正しく理解するとともに、差別や偏見の実態を正しくとらえ、共に生きる社会を築こうとする態度や実践力を高める学習に努める。
- ハンセン病患者・元患者等の話を聞いたり、施設への訪問をしたりするなど、ハンセン病や患者等に対する正しい理解を深め、偏見や差別意識を解消していく態度や実践力を高める学習を行う。
- 国の政策や判決等の学習だけに終わることなく、ハンセン病患者・元患者等と共に生きる社会の実現を目指す態度の育成を図る。
- 家族にHIV感染者・エイズ患者、ハンセン病患者・元患者がいる場合には、差別や偏見に傷つき、苦しんだり悩んだりすることがないように対応に配慮する。
- 保健所等の関係機関との連携を図りながら、指導の充実に努める。