4.現状と課題
7.同和問題
(1).現状と課題
昭和40年に出された「同和対策審議会答申」では、「いわゆる同和問題とは、日本社会の歴史的発展の過程において形成された身分階層構造に基づく差別により、日本国民の一部の集団が経済的・社会的・文化的に低位の状態におかれ、現代社会においても、なお著しく基本的人権を侵害され、特に、近代社会の原理として何人にも保障されている市民的権利と自由を完全に保障されていないという最も深刻にして重大な社会問題である。」と定義しました。
そして、その答申の中で「同和問題の早急な解決こそ国の責務であり、国民的課題である。」とし、その趣旨を踏まえて関係法令が整備され、同和対策事業が進められました。
昭和44年「同和対策事業特別措置法」、昭和57年「地域改善対策特別措置法」、昭和62年「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(以下「地対財特法」という。)」を制定し、数々の施策を推進してきました。
このような状況の中、平成8年に「地域改善対策協議会意見具申」が出されました。これまでの特別対策により生活環境の改善をはじめとする物的面での格差は大きく改善されましたが、この具申では「今後の主要な課題は、依然として存在している差別意識の解消、人権侵害による被害の救済等の対応、教育、就労、産業等の面でなお存在している格差の是正、差別意識を生む新たな要因を克服するための施策の適性化である。」と指摘しました。また、「今後、差別意識の解消を図るに当たっては、これまでの同和教育や啓発活動の中で積み上げられてきた成果とこれまでの手法への評価を踏まえ、すべての人の基本的人権を尊重していくための人権教育、人権啓発として発展的に再構築すべき」と提言しました。
これを受けて、平成9年、地対財特法はその対象とする事業を絞り込み、さらに5年間の延長で平成14年3月31日までに事業を終了し、今後は一般対策の中で対応することになりました。
宮崎県においても、同和問題の早期解決に向けて同和対策事業を推進し、その結果、生活環境などの物的な面においては相当程度改善が進みました。
教育については、昭和52年に「宮崎県同和教育基本方針」を策定(昭和62年改定)し、教育基本法の理念のもとに、真に差別をなくしていく意志と実践力とをもった児童生徒の育成を目指して、すべての学校(園)及び地域社会において人間の尊厳、人権の尊重を基調とする教育活動を積極的に展開してきました。
啓発については、宮崎県人権啓発推進協議会や宮崎県人権啓発協会が中心となって、講演会の開催、資料の作成・配布などの様々な啓発活動を積極的に展開するなど同和問題の早期解決に向けた人権意識の高揚に努めてきました。
同和問題を解決することは、同和地区の人々の基本的人権を保障することです。そのためには、すべての国民が今日の社会に根強く残っている不合理や偏見に気付き、互いの基本的人権を大切にし自分自身の課題としてとらえ直すことが必要です。
同和問題をはじめとする様々な差別の不当性を国民一人一人が認識し、差別の撤廃に向けてそれぞれの立場で努力することは、国民の果たすべき責務として当然のことと言えます。国民一人一人が同和問題と真摯に向き合い、解決のために主体的に取り組むことによって、初めて解決が可能になるのです。
(2).指導の在り方及び配慮事項
社社会教育においては、人権尊重の教育をより深く推進することにより、部落差別に対する科学的認識を深め、広い人類愛に裏づけられた真に差別をなくしていく意志と実践力とをもった人間を育成するとともに、そのための意欲と充実に努めることが求められます。
指導においては、以下の点に配慮することが必要です。
- 結婚差別や就職差別、差別発言や差別落書き等、今なお残っている部落差別に対して、正しい理解と認識を深めることができるようにする。
- 同和問題を自分の問題としてとらえ、正しく判断し、行動することができるようにする。
- 被差別の人々の継承してきた文化や産業等について正しく理解する。
- 同和問題の解決を自らの課題とし、差別を見抜く感性を高め、同和問題を解消する姿勢を確立するための研修に努める。
- 行政と地域社会が一体となった人権教育推進体制を確立し、県内全域において同和問題を解消する取組の充実を図る。
- 公民館等における講座・学級において同和問題に関する学習機会を充実し、学習内容や方法の改善を図る。