4.現状と課題
2.家庭教育における問題
(1).現状と課題
家庭教育は、親や、これに準ずる人が子どもに対して行う教育のことで、すべての教育の出発点であり、家庭は常に子どもの心の拠り所となるものです。乳幼児期からの親子の愛情による絆で結ばれた家族との触れ合いを通じて、子どもが基本的な生活習慣・生活能力、人に対する信頼感、豊かな情操、他人に対する思いやりや善悪の判断などの基本的倫理観、自立心や自制心、社会的なマナーなどを身に付ける上で重要な役割を担うものです。さらに、人生を自ら切り拓いていく上で欠くことのできない職業観、人生観、創造力、企画力といったものも家庭教育の基礎の上に培われるものです。
また、家庭教育においては、子どもが幼い頃から親や身近な大人によって受容され、自分自身を大切な存在として認め、欠点も含めて自分自身を大切にする気持ちを養うことができるように人権教育を行うことが重要です。
しかしながら、少子化や核家族化、地縁的な人間関係の希薄化など、家庭を取り巻く環境の変化に伴い、今日、子育てに不安や負担感を抱く親の増加が指摘されています。本県においても、平成16年度に実施された県民意識調査の結果、63%の親が子育てに不安や負担感を感じると答えています。さらに、過保護や過干渉、放任などに伴い、家庭の教育力の低下が危惧されるとともに、子どもへの虐待が急増するなど深刻な状況も生じています。
また、平成17年度の文部科学省調査によると、午後10時以降も起きている6歳未満の幼児は29%に上るとともに、朝ごはんを食べないことがある小学生は 15%、中学生は22%にも上るという結果が出ています。「早寝、早起き、朝ごはん」という、以前では当たり前の習慣であったことが、現在、崩れてきており、子どもの基本的生活習慣の乱れも指摘されています。
このような現状を踏まえると、家庭教育の中で、子どもに対する人権教育が十分に行われているとは言えない状況が窺えます。家庭は本来私的な領域であり、家庭教育はそれぞれの親の責任と自覚に委ねられるべきものですが、社会全体が家庭における子育てや教育を応援し、支えていくことが強く求められています。
(2).指導の在り方及び配慮事項
家庭において、子どもの人権を尊重し、豊かな人間性を育む教育を行うためには、何よりまず、家庭教育を行う側の親自身の生き方や子育てに対する姿勢について考えていく必要があります。その際、親の悪い点ばかりを批判するのではなく、我が子に対する教育を行う親を社会全体で支えていくという観点から、子育てに悩む親に寄り添い、耳を傾け、適切なアドバイスを行っていくという姿勢が重要となります。かけがえのない生命、身体そして家族を大切にする心や習慣を大人も子どもももてるよう、豊かな人間性を育む家庭教育の支援を行うことが求められています。
指導においては、以下の点に配慮することが必要です。
- 親も子どもも共に人権感覚が身に付くように、親子の触れ合いや交流を促進する活動を積極的に取り入れるなど、家庭教育に関する学習機会の充実を図る
- 子育てや家事、介護などについての不安や悩みに対して、地域の身近な人が相談相手になるなど、気軽に相談できる体制の充実を図る。
- 男女が共に協力し合える男女共同参画社会の実現に向けた家庭づくりを推進するため、地域の広報誌や掲示板等を活用し、家庭における人権教育の充実を図る。