4.現状と課題
1.全般的な人権問題
(1).現状と課題
社会教育における人権教育の目標は、人権が一人一人の身近な問題であるとの認識を深め、日常生活において、人権への配慮が態度や行動に現れるような「人権のまちづくり」を推進することです。
各市町村では、研修会、講演会、公民館等での学級・講座等において、地域の実態に応じながらワークショップ等を取り入れるなど創意工夫のなされた先駆的・先進的な取組も報告されています。
しかしながら、全体的にみると、公民館等での学級・講座等に人権教育に関して直接的な内容を取り上げる回数が少なく、加えて、学習内容のマンネリ化や参加者の固定化等が多くの市町村で課題としてあげられているのが現状です。
この原因については、次のようなことが考えられます。
- 学習者が、人権問題を自分のこととして受け止めることができるような学習内容が提示されていなかった。
- 人権問題についての学習機会が十分に提供されていなかった。
- 人権問題についての効果的な学習活動を実施することのできる指導者が十分に養成されていなかった。
- 講話や説明的な学習が多く、参加者の興味・関心を得られるような学習プログラムが不十分だった。
人権尊重の気運が国際的にも大きな高まりを見せる中、私たちの身近な地域においても、すべての人の人権を尊重しようとする人権感覚をもった人間の育成を目指し、積極的に人権教育を展開していくことが求められています。
(2).指導の在り方及び配慮事項
社会教育においては、県民の一人一人に家庭や学校、地域社会などあらゆる場を通じて様々な人権問題に関する教育・啓発を実施することによって、人権尊重の理念について正しい理解を深め、それが日常生活の中で態度や行動として根づくことを目指して、より効果的な人権教育や啓発活動を総合的に推進することが求められています。
指導においては、以下の点に配慮することが必要です。
- 地域住民の人権意識を高める学習機会の提供や、互いの交流を促進する中で、互いの人権を尊重する立場に立った事業の実施など、社会教育の特性を生かした人権教育の充実を図る。
- 学校教育との連携を図りながら、ボランティア活動などの社会奉仕体験活動、自然体験活動をはじめとする多様な体験活動や、高齢者・障がい者・外国人等との交流の機会の充実を図り、人権への配慮や行動を身に付けられるような活動を行う。
- 身近な具体的事例を取り上げたり、様々な人との触れ合い体験などの社会教育活動を通した学習内容を開発したりして、学習意欲を高める指導方法を創意工夫する。
- 社会教育関係団体やNPO等の民間団体等の活動の中で、行政と連携・協働して人権教育・啓発が行われるよう支援を行う。
- 地域社会において、人権教育・啓発を先頭に立って推進していく指導者の養成及び資質の向上を図り、社会教育における指導体制の充実を図る。