2.社会教育における人権教育
5.推進方法 (支援体制等の整備及び指導者の養成)
ア. 地域社会で取り組む推進体制の整備・強化
人権問題に関する系統的、計画的、継続的な学習を展開し、深化させるためには、以下に述べるような人権教育推進体制の整備を図ることが重要です。
(ア). 人権教育推進協議会等の設置
各市町村において、人権教育を推進するために市町村の教育関係職員、関係機関及び関係団体等の関係者による人権教育推進協議会を設置し、人権教育総合計画を立てます。
(イ). 人権教育基本方針の策定
地域の実態に即した人権教育基本方針を策定します。基本方針の中で、社会教育における人権教育の位置づけを明確にすることにより、効果的な取組が期待できます。
(ウ). 人権教育担当者の配置
「地域ぐるみ」で社会教育における人権教育を推進するためには、関係機関や関係諸団体との連携を密にしながら進めることが大切です。
そのためには、各市町村教育委員会が企画、連絡、調整役としての担当者を配置し、その機能を十分に発揮できるようにする必要があります。
(エ). 社会教育における人権教育研修事業の実施
社会教育における人権教育を推進するためには、人権問題に対する正しい認識を深めることが大切です。
教育委員会に常勤する職員、教育委員、社会教育委員はもとより、公民館、図書館、青少年教育施設等に勤務するすべての教育関係者及び社会教育関係団体役員等を対象とした研修を組織的・計画的・継続的に実施し、共通理解を図る必要があります。
イ. 支援体制等の状況把握
人権尊重について地域社会で取り組んでいこうとする気運の醸成に努めていくことが必要であり、次のことを把握し、組織的・計画的に地域社会における支援体制の在り方を考えることが大切です。
- 人権教育推進協議会等の推進組織の活動状況
- 人権尊重に関する地域住民の願いやニーズ
- 人権教育推進のための指導者や担当者の実情
ウ. 県・市町村及び社会教育関係団体等の相互の連携
県、市町村及び社会教育関係団体や民間団体、企業等には、「県民一人一人の人権が尊重された心豊かな地域社会」の実現に向けて、それぞれに果たす役割があります。また、それぞれが相互の連携を図ることが求められています。
例えば、人権教育推進協議会に諸団体からの代表者を参画させ、諸団体間の連携強化を図る横断的なネットワークを形成することが考えられます。そのような横断的なネットワークを形成することで、諸団体の取組について情報交換を行うことができます。その中で、互いの活動をより理解し合うこともでき、それぞれの取組を整理統合し、これからの方向性を考えることも可能になります。
エ. 指導者の養成及び資質の向上
指導者には、それぞれの立場で人権教育を推進していくリーダーやアドバイザーとしての役割を自覚し、地域社会における人権教育組織の委員としても活躍したり、人権教育に関する研修会等の企画・運営に携わったりすることが期待されています。そこで、公民館長研修、家庭教育学級長研修、行政職員研修会、教職員研修等、様々な機会を活用して、指導者を養成していくことが重要です。特に、女性や子どもに関わる問題が深刻化していることや研修会等への参加者の年代や性別の偏りなどが課題になっている場合は、女性や若年層のリーダーの養成が必要となります。
さらに指導者の養成とその資質の向上を図るためには、地域社会の実情を把握した上で、次のようなことが求められています。
- 「基本的人権に関わる学び」について理解を深める。
- 人権に関わる講演会や講座等への自主的な参加により、幅広い知識を得たり、体験したりする。
- 日頃から人権感覚を豊かにするための自己啓発に努める。
オ. 普及・啓発活動の推進
人権教育に関する理解と共感を得るためには、人権をめぐる今日の社会情勢を踏まえた普及・啓発活動が重要となります。啓発の内容としては、次のようなものが考えられます。
- 憲法をはじめとした人権に関わる国内法令や国際条約の周知など、人権に関する基本的な知識の習得を目的とした啓発
- 生命の尊さ・大切さや、自己がかけがえのない存在であると同時に他者もかけがえのない存在であること、他者との共生・共感の大切さを真に実感できるような啓発
- 正義を重んじ、だれに対しても公正、公平にし、差別や偏見のない社会の実現を図ることの大切さを人々に訴えかける啓発
また、啓発の方法に関し、人々の理解と共感を得るという視点から留意すべき主な点として、対象者の発達段階に応じた啓発、具体的な事例を活用した啓発、参加体験型の啓発などがあげられます。具体的なものでは、人権教育推進大会及び研修会、作文や標語の募集、広報誌の発行、ポスター、リーフレット、啓発グッズ等の作成・配布などが考えられます。