1.本県の人権教育の基本的な考え方
3.これからの人権教育
人権教育・啓発に関する基本計画(平成14年3月閣議決定)では、「社会教育においては、すべての人々の人権が真に尊重される社会の実現を目指し、人権を現代的課題の一つとして取り上げた生涯学習審議会の答申や、家庭教育支援のための機能の充実や、多様な体験活動の促進等について提言した様々な審議会の答申等を踏まえ、生涯学習の振興のための各種施策を通じて、人権に関する学習の一層の充実を図っていく必要がある。その際、人権に関する学習においては、単に人権問題を知識として学ぶだけではなく、日常生活において態度や行動に現れるような人権感覚の涵養が求められる。」と述べています。つまり、これからの人権教育は、21世紀の社会を一人一人が主体的に生きていくために必要な人権に関する資質や能力の育成を目指して行わなければなりません。
そのためには、特に、次の二つの観点から取り組むことが求められます。
(1)自己理解を深め、自尊感情を育てる
自尊感情とは、「自分のことが好き」と思う気持ちのことです。自分自身をしっかり見つめて、自分のよさや弱さなどに気付き、自己理解を深めることで、自分を大切に思い、自分を好きになり、自分に自信をもつことができるようになるということです。
人は、自分を好きになることによって、前向きに生活しようとする意欲が生まれ、周りの人を大切に思うこともできるようになります。つまり、自分の大切さとともに他の人の大切さを認めることができるようになるのです。このことは、ひいては主体的に差別を解消しようとする態度や行動にもつながります。
また、このように、自己理解を十分深めさせ、自尊感情を高めることは、自己確立や自己実現を図るための基盤をつくることになります。
(2)他者理解を深め、違いを個性として認める気持ちを育てる
人は、それぞれ違った個性や特徴をもっています。しかし、私たちの周りでは、「みんな一緒」「みんな同じ」であることを平等ととらえる傾向があり、そのことがときには、「みんなと同じでない」ということから、「異質」として排除することにつながることがあります。このような考え方は、一つの社会秩序や価値観となり、「異質」と見なされた人々に対する差別や偏見を生み、その人々の自己実現を阻んでいる場合も多く見られます。
国際社会の中で、21世紀を生きていくには、多様な文化や価値観をもった人々との共生が求められています。そのためには、他の人の立場に立って考えることができる想像力や共感的に理解する力を培うとともに、一人一人の違いを個性としてとらえることのできる寛容の精神を養う必要があります。そして、互いの存在を尊重し、人権を大切にする生き方を生活の中で具体的に展開することのできる力を身に付けなければなりません。
このように、多様性を認め、他者理解を深めるようにすることが、人間としての尊厳を尊重することができる人々を育成していくことにつながるのです。